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SIer単価はなぜ安い?商流と契約形態で給与との差を読み解く

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SIer単価はなぜ安い?商流と契約形態で給与との差を読み解く

SIerの案件は、人月単価80万円や100万円といった金額で契約されていることがあります。ところが、実際に現場で働くエンジニアの手取りは、その単価よりかなり低いことがほとんどです。この差がどこに消えているのか、気になっている人は多いはずです。

この記事では、SIer業界の人月単価の仕組みを、商流の階層と契約形態の両方から整理しました。単価と給与が分かれる理由を一次情報で確認したうえで、単価の高い働き方に近づくための方法も紹介します。

この記事の調べ方
  • 情報の確認日 2026年10月1日
  • 読み比べた記事 検索上位の5本
  • 確認した一次情報 中小企業庁『下請ガイドライン』、民法の条文(請負・準委任)、厚生労働省『賃金構造基本統計調査』
  • 参考にした読者の声 SIer・SESの商流や単価を解説する複数の業界サイト、知恵袋やブログに書かれた体験の要旨

この記事は筆者の体験談ではなく、公的な制度や統計、複数の解説記事を読み比べて整理したものです。数値は確認できたものだけを載せ、確認できなかったことは「この記事で分からないこと」にまとめています。

「SIer単価」とは何を指すのか

SIerの案件で支払われる単価のイメージイラスト

SIer単価とは、SIer(システムインテグレーター)が請け負う案件で、クライアント企業が支払う人月単価のことです。人月単価は、技術者1人が1か月働いたときの対価を示す金額で、契約書に金額として明記されます。要件定義や設計などの上流工程ほど高く、運用保守のような定型業務ほど低く設定される傾向があります。

ここで注意したいのは、この単価がそのままエンジニア個人の給与になるわけではないという点です。クライアントが支払う単価は、元請けSIerや間に入る会社の取り分を経たうえで、最終的に案件を担当する技術者の給与や会社の諸経費にあてられます。単価と給与を同じものだと思って案件を比べると、実際の手取りとの差に戸惑うことになります。

工程ごとの単価の目安

人月単価は、工程の難易度と求められるスキルで変わります。フリーランスインフラエンジニアの紹介サービスを運営するクロスネットワークは、要件定義・設計を80万円から110万円、構築を70万円から90万円、運用保守を55万円から75万円という目安で示しています。

工程単価の目安(月額)
要件定義・設計80万円〜110万円
構築70万円〜90万円
運用保守55万円〜75万円

フリーランスインフラエンジニアの紹介サービス、クロスネットワークが公表している目安(2026年10月1日確認)。発注企業向けの予算設定の目安であり、公的統計ではない

単価はクライアントが払う金額であって給与ではない

単価は、あくまでクライアント企業とSIer(または間に入る会社)の間の契約金額です。案件を担当する技術者本人の給与は、この単価から会社の取り分を差し引いた金額で決まるため、単価と給与は別の数字として扱う必要があります。

ままま

「単価が高い案件=自分の給与が高い」とは限りません。まずは単価と給与が別物だと知っておくと、この先の商流や契約形態の話が理解しやすくなります。

商流の階層によって単価の受け取り方が変わる

SIerの商流の階層を整理するイラスト

SIerの案件には、建設業と同じように、元請けから下へ仕事が流れる多重下請け構造があります。クライアントから直接仕事を受ける元請けSIerを筆頭に、二次請け、三次請け、四次請けと下へ流れるほど、受け取る単価は低くなっていく傾向があります。同じ業務内容でも、商流のどの位置で契約しているかによって、受け取る金額が変わるのがこの構造の特徴です。

@ITの解説記事によると、商流上の立ち位置は企業単位で固定されているわけではなく、ある案件では二次請けだった会社が、別の案件では三次請けになることもあります。

元請け・二次請け・三次請けという構造

元請けSIerは、クライアントと直接契約を結び、プロジェクト全体の責任を負います。二次請け以下の会社は、元請けや上位の会社とだけ契約を結び、クライアントと直接の契約関係を持たないのが基本です。

  • 元請け(プライムベンダー)はクライアントと直接契約する
  • 二次請けは元請けと契約し、クライアントとは直接の契約関係を持たない
  • 三次請け以下はさらに上位の会社とだけ契約する
  • 同じ会社でも、案件によって商流上の位置づけは変わる

商流の位置は会社ではなく案件で決まる

自分が入る案件が商流の何次請けにあたるかは、契約書や指揮命令の体制を見れば確認できます。元請けに近いほど単価は高くなりやすく、下流になるほど同じ業務内容でも単価が低くなりやすいという傾向があります。

商流の位置契約の相手単価水準の傾向
元請けクライアント最も高い
二次請け元請けSIer中程度
三次請け以下二次請け以下の会社低くなりやすい

キャリアノート編集部が、複数の業界解説記事に共通する一般的な傾向を整理(個々の案件の階層構成や単価は契約により異なる)

客先に常駐して働く案件は、商流の下流にあたることが多く、仕事の中身と単価が見合っているかを見極める必要があります。客先常駐の働き方の詳しい実態は、インフラエンジニアの客先常駐についての記事にまとめています。

契約形態で単価の決まり方が違う

SIerの契約書を確認するイラスト

SIerの案件は、主に請負契約と準委任契約のどちらかで結ばれます。どちらの契約かによって、報酬の支払い条件や、現場での指揮命令の仕組みが変わり、単価の決まり方にも影響します。契約書の種類を確認するだけでも、自分の働き方の前提をつかむ手がかりになります。求人票には契約形態まで書かれていないことも多く、面談で確認する項目になります。

請負契約の仕組み

請負契約は、仕事を完成させることに対して報酬が支払われる契約です。民法632条は、請負について次のように定めています。

請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

出典 民法632条

請負契約では、成果物を納品して初めて報酬が確定します。元請けSIerが大規模な開発案件を引き受けるときは、この請負契約で結ばれることが多いとされています。

準委任契約の仕組み(SESの基本形)

準委任契約は、仕事の完成ではなく、委託された業務を遂行すること自体に対して報酬が支払われる契約です。民法656条は、法律行為でない事務の委託について、委任の規定を準用すると定めています。

この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。

出典 民法656条

freeeの解説記事によると、SES(システムエンジニアリングサービス)はこの準委任契約を基本とし、指揮命令権はクライアントではなくSES企業の側にあります。クライアントが技術者に直接業務の指示を出すと、労働者派遣法に抵触するおそれがあります。

  • 請負契約は仕事の完成に責任を負い、納品して報酬が確定する
  • 準委任契約は業務の遂行自体が報酬の対象で、完成責任は負わない
  • 準委任契約(SES)では指揮命令権が受注側の会社にある
  • どちらの契約かは、見積もりの単位(成果物単位か稼働時間単位か)にも表れる
⚠️ 注意したい点

準委任契約のはずなのに、クライアントの社員から直接細かい指示を受けている場合は、偽装請負にあたる可能性があります。契約書の内容と現場での指示系統が一致しているかは、確認しておく価値があります。

単価と給与の差はどこに消えるのか

単価の内訳からお金の流れを考えるイラスト

クライアントが支払う単価は、商流を下りる過程で、各社の人件費・管理費・利益が上乗せされたり差し引かれたりします。この流れを知っておくと、自分の給与が単価よりなぜ低いのかを具体的に理解できます。会社ごとの内訳は公開されていませんが、おおまかな構造は複数の解説記事で共通しています。おおよその比率を知っておくと、自分の給与明細を見るときの目安になります。

単価の内訳(人件費・管理費・利益)

一括見積もりサイトimitsuの解説では、クライアントが支払う月額単価100万円のうち、技術者本人の給与にあてられるのはおおむね50万円から60万円で、残りは社会保険料や開発環境費、管理費、会社の利益にあてられるという目安が示されています。

単価の内訳目安内容
技術者本人の給与50%〜60%基本給・残業代など
社会保険料・開発環境費会社が負担する法定費用や機材費
管理費・会社の利益営業・管理部門の人件費や会社の取り分

複数のSES・受託開発の解説サイトが示す目安をキャリアノート編集部が整理(公的統計ではなく、各社の算出根拠は非公開。確認日2026年10月1日)

多重下請けによる中抜きと、適正化の枠組み

業界解説記事では、多重下請け構造の中で、エンジニアが生み出す報酬のうち3割から最大6割程度が、間に入る会社のマージンとして差し引かれるという目安が示されています。階層が増えるほど、この目減りが積み重なります。

こうした下請け取引の適正化に向けて、中小企業庁は下請代金支払遅延等防止法にもとづき、情報サービス・ソフトウェア産業を含む業種別の「下請ガイドライン」を策定しています。不当な値引きや支払いの遅延は、このガイドラインが問題視している行為にあたります。

ままま

マージンの割合そのものは会社によって非公開です。ただ、商流が1つ増えるごとに取り分が目減りする構造だと知っておくだけでも、案件や転職先を選ぶときの見方が変わります。

厚生労働省の統計で見るエンジニアの給与水準

統計データから給与水準を確認するイラスト

単価と給与を具体的な数字で比べるために、厚生労働省の公的統計を確認します。「令和6年賃金構造基本統計調査」では、職種別の給与が公表されており、SIerで働くエンジニアに近い職種も含まれています。会社ごとの単価とは違い、公的統計は毎年決まった方法で集計されているため、継続して比較する基準として使えます。

ソフトウェア作成者とシステムコンサルタント・設計者の違い

統計上の職種名は、普段の呼び方と異なります。SE(システムエンジニア)やプログラマーは「ソフトウェア作成者」、ITコンサルタントやシステムアーキテクトに近い職種は「システムコンサルタント・設計者」という区分で集計されています。引用するときは、この違いを取り違えないことが大切です。

e-Statの統計ページで公表されている「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、企業規模10人以上の事業所における「ソフトウェア作成者」(平均年齢38.0歳、勤続年数10.7年)のきまって支給する現金給与額(月額の平均)は38万6200円でした。

同じ調査で、「システムコンサルタント・設計者」のきまって支給する現金給与額(月額の平均)は47万8000円、年間賞与その他特別給与額は111万9000円でした。どちらも平均値であり、母集団は企業規模10人以上の事業所に勤める労働者です。

職種(統計上の呼び方)きまって支給する現金給与額(月額の平均)年間賞与その他特別給与額
ソフトウェア作成者38万6200円この記事では未確認
システムコンサルタント・設計者47万8000円111万9000円

厚生労働省『令和6年賃金構造基本統計調査』(企業規模10人以上、全国)の数値をもとにキャリアノート編集部が整理。平均値であり中央値ではない。統計表の原本はこの環境から直接開けないため、検索結果に掲載された数値を確認した(確認日2026年10月1日)

単価と給与の差を統計から読む

ここで比べている人月単価(70万円から110万円程度)と、統計上の月給(38万円から48万円程度)は、算出方法も対象になる母集団も異なるため、単純な引き算で中抜き額を出すことはできません。ただし、クライアントが支払う金額と、統計上のエンジニアの給与水準には、数字の上で大きな開きがあることが分かります。

単価の高い働き方に近づく方法

フリーランスとして働く選択肢を考えるイラスト

商流の下流に長くいるほど、単価も給与も上がりにくい傾向があります。上流工程の経験を積むことと、直接契約に近づくことの2つが、単価を上げるための主な道筋です。どちらも資格の取得だけでは届かず、実際の案件でどう動くかが問われます。今の職場を変えずに進められる取り組みもあるため、焦って転職先を探す前に試す価値があります。

上流工程に関わる経験を積む

要件定義や設計を担当できるようになると、人月単価そのものが上がりやすくなります。今の案件が運用保守や構築であっても、設計書を読み込む、改善案を自分から提案するといった行動が、上流工程に移る実績になります。

フリーランスとして直接契約に近づく

商流の階層を減らし、クライアントや元請けに近い立場で契約できれば、単価の取り分は増えやすくなります。フリーランス向けの案件仲介サービスの集計では、2026年7月度のフリーランスエンジニアの月額平均単価は78万4000円と公表されています。

フリーランススタートの集計によるこの数値は、スキルや経験年数が異なる技術者をまとめて平均した値です。自分のスキルがどの水準にあるかによって、実際に提示される単価は上下します。

  • 要件定義・設計の工程に関わった実績を作る
  • 商流の階層が少ない案件(元請けや直接契約に近い案件)を選ぶ
  • フリーランスエージェントで、スキルに見合った単価の案件を比較する
  • 資格や実務経験を、職務経歴書で工程単位で説明できるようにする

SES企業を経由して働く場合も、会社によって案件の商流や単価の方針は異なります。SES会社を比較した記事では、会社を選ぶときに確認したい観点を整理しています。

ままま

単価を上げる近道は、資格を増やすことより、上流工程の経験と、商流の浅い案件を選ぶことです。今の案件が何次請けかを、まず確認してみてください。

商流と契約形態を確認するための質問リスト

面談で商流や契約形態を確認するイラスト

単価や商流の情報は、求人票だけでは分からないことがほとんどです。転職エージェントとの面談や、企業との面接で直接聞くことで、入ってから「思っていた条件と違う」という失敗を減らせます。聞きにくいと感じる項目ほど、事前に質問を用意しておくと話しやすくなります。遠慮して聞かずに入社すると、あとから条件を確認しにくくなります。

契約形態を確認する質問

まず、自分が結ぶ契約が請負なのか準委任なのかを確認します。契約形態によって、報酬の決まり方や、現場での指示の受け方が変わるためです。

  • 自分の契約形態は請負契約か準委任契約か
  • 準委任契約の場合、指揮命令権はどちらの会社にあるか
  • 残業や成果物の扱いは、契約書のどの条項に書かれているか

商流の位置を確認する質問

次に、自分が担当する案件が商流の何次請けにあたるかを確認します。エージェントが商流を正確に把握していない場合もあるため、具体的な契約関係まで踏み込んで聞くことが大切です。

  • この案件の元請けはどの会社か、自分の会社は何次請けにあたるか
  • 単価の改定は、どのタイミングで、誰との交渉で行われるか
  • 同じ案件で、上流工程を担当する人はどの会社に所属しているか
💡 ここだけ押さえる

商流や単価の詳細を教えてもらえない、あるいは答えがあいまいな場合は、階層が深く、単価の取り分が小さい案件である可能性を考えておくと安全です。

この記事で分からないこと
  • 個々の企業・案件ごとの正確なマージン率(取り分の割合)は公開されていません。この記事で示した内訳は、複数の解説サイトが示す目安にとどまります
  • 厚生労働省の統計上の職種区分(ソフトウェア作成者・システムコンサルタント・設計者)は、SIerの商流の階層とそのまま対応するわけではありません
  • フリーランス単価の集計データは、対象となる技術者のスキルや経験年数の分布が公開されていないため、個人の単価をそのまま予測する材料にはなりません
  • 中小企業庁の下請ガイドラインは、本文のPDFをこの環境から直接開けなかったため、存在と対象業種の確認にとどめています

よくある質問

SIer単価と自分の給与はどのくらい差がありますか?

会社や商流の階層によって差は大きく変わるため、一律の割合では答えられません。この記事で紹介したように、単価のうち技術者本人の給与にあてられるのはおおむね50%から60%程度という目安を示す解説サイトが複数ありますが、これは公的統計ではなく、会社ごとの実際の割合は公開されていません。自分の案件については、契約内容や面談で直接確認するのが確実です。

準委任契約と請負契約はどちらが単価が高いですか?

契約形態そのものが単価の高さを決めるわけではなく、担当する工程や求められるスキルのほうが単価への影響は大きいといえます。ただし、請負契約は成果物の完成責任を負う分、見積もりに責任分のコストが乗りやすく、準委任契約は稼働時間に応じた精算になりやすいという違いがあります。どちらの契約かは、自分の働き方や残業の扱いにも関わるため、単価と合わせて確認しておくべき項目です。

単価を上げるために、まず何から始めればいいですか?

今の案件が商流の何次請けにあたるかと、担当している工程が運用保守・構築・設計のどれにあたるかを、まず確認してください。運用保守が中心なら、改善提案や上流工程への関わりを増やすことが単価を上げる第一歩になります。すでに構築や設計を担当しているなら、フリーランスや直接契約に近い案件を比較してみる価値があります。

まとめ

SIerの人月単価は、クライアントが支払う金額であって、エンジニア個人の給与とは別の数字です。商流の階層が増えるほど、また契約形態によっても、単価から給与に回る割合は変わります。この違いを知っているだけで、求人や案件を比べるときの見方が変わります。単価の金額だけで案件の良し悪しを判断しないことが大切です。

  • SIer単価は工程の難易度で決まり、要件定義・設計が最も高く、運用保守が低くなりやすい
  • 商流の階層(元請け・二次請け・三次請け)が下がるほど、単価は目減りしやすい
  • 請負契約と準委任契約では、報酬の決まり方と指揮命令権の所在が異なる
  • 単価のうち技術者本人の給与にあてられるのはおおむね50%から60%程度という目安がある
  • 厚生労働省の統計では、ソフトウェア作成者とシステムコンサルタント・設計者で給与水準に差がある
  • 単価を上げるには、上流工程の経験を積むことと、商流の浅い案件を選ぶことが近道になる

まずは、自分が担当している案件が商流の何次請けにあたるのか、契約形態は何かを確認するところから始めてみてください。このサイトの記事の作り方は編集方針と情報源にまとめています。

参考資料

この記事を書いた人
ままま
Webメディア運営・SEO

2018年からWebメディアの立ち上げ・運営に携わり、サイトM&Aでの売買は累計5,000万円以上。SEOとAI活用を軸に、IT業界や企業の情報を有価証券報告書・公的統計などの一次情報から整理して発信しています。

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