SES会社とは?商流の位置と売上規模で見分ける実態とポイント

「SES会社」で検索すると、大手から零細まで無数の一覧記事やランキングが出てきます。ただ、同じSES会社という言葉でも、元請けに近い会社と三次請け以降の会社とでは、任される仕事も単価の決まり方もまったく違います。
この記事では、SES会社の実態を「商流上の位置」と「売上規模」という2つの軸で整理し、求人票や公開情報だけで会社のタイプを見分ける方法をまとめました。特定の会社への評価ではなく、誰でも確認できる基準を先に持てるようにすることが目的です。
- 情報の確認日 2026年9月22日
- 読み比べた記事 検索上位の8本
- 確認した一次情報 厚生労働省『労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準』(37号告示)、公正取引委員会『ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書』(2022年6月公表)、経済産業省『IT人材を巡る現状について』、国税庁法人番号公表サイト、金融庁EDINET
- 参考にした読者の声 Yahoo!知恵袋の質問2件、SNS上で共有されている注意喚起の投稿、SES業界の商流を解説する記事
この記事は筆者の体験談ではなく、上の資料と投稿を読み比べて整理したものです。個別の会社の評価やランキングは行わず、公開情報で誰でも確認できる基準だけを示しています。確認できなかったことは『この記事で分からないこと』にまとめています。
SES会社とは 契約形態と生まれる理由

SES会社とは、自社が雇用するエンジニアの技術力を契約に基づいて他社に提供し、システム開発やインフラ運用の現場で働いてもらう企業のことです。エンジニアは客先に常駐することが多いものの、雇用主はあくまでSES会社で、業務の指示も本来はSES会社側の管理のもとで行われます。名刺の会社名だけを見ても、この後で説明する商流や規模までは分かりません。
検索で見つかる「SES会社」を扱う記事の多くは、大手から零細までを一律に扱っていますが、実際には商流上の位置と会社の規模によって、働き方も評価のされ方も変わります。まず契約の仕組みから確認します。
SESの契約形態は準委任契約
SES会社がエンジニアを現場に送り出す契約は、一般に準委任契約と呼ばれます。準委任契約では、成果物の完成そのものではなく、一定の業務を遂行すること自体が契約の対象になります。BUSINESS LAWYERSの解説でも、この点が請負契約との違いとして説明されています。
準委任契約と労働者派遣契約の大きな違いは、誰が指揮命令を行うかです。準委任契約なら現場にいてもSES会社が指示を出し、労働者派遣契約なら客先企業が指示を出します。この線引きの根拠になっているのが、厚生労働省の37号告示です。
この基準は、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の施行に伴い、法の適正な運用を確保するためには労働者派遣事業に該当するか否かの判断を的確に行う必要があることにかんがみ、労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分を明らかにすることを目的とする。
契約書の名称が準委任や請負であっても、実際にクライアント企業がエンジニアへ直接指示を出していれば、労働者派遣とみなされる可能性があります。この状態は業界で偽装請負と呼ばれ、SES会社を見分ける際にも関わってくる論点です。
SES会社が生まれる理由は人材不足と専門分化
SES会社という業態が広がっている背景には、IT人材の不足と技術分野の細分化があります。経済産業省の資料では、開発規模が大きいプロジェクトほど自社の人員だけでは足りず、短期間で専門知識を持つ人材を外部から集める必要があることが、下請け構造が生まれる要因として挙げられています。経済産業省『IT人材を巡る現状について』
1社で完結しない大型のシステム開発では、元請けが受注した業務の一部を他社へ再委託し、その会社がさらに別の会社へ再委託することがあります。SES会社の多くは、この連なりのどこかに位置しています。
SES会社という言葉は一律に語られがちですが、契約の建て付けと成り立ちを知っておくと、この後の商流や規模の話が理解しやすくなります。
商流上の位置による違い 元請けと二次請け以降

商流とは、エンドクライアントから仕事がどのような順番で流れてくるかを表す言葉です。エンドクライアントと直接契約していれば1次請け(エンド直)、間に1社入れば2次請け、2社入れば3次請けと数えます。SES会社の名刺だけでは分からない、会社の立ち位置を示す軸のひとつです。Heyday透明性メディア『SES商流とは』
SES会社の多くは2次請け以降に位置しており、エンド企業や元請けのSIerと直接契約する機会は限られます。商流が深くなるほど間に入る会社の数だけ手数料が重なり、現場のエンジニアに渡る原資は構造的に減っていきます。
元請け・一次請けの特徴
元請けや一次請けの位置にいる会社は、エンド企業と直接契約し、要件定義や全体設計といった上流工程を担うことが多くなります。人員を自社だけでまかなえない場合、二次請け以降の会社へ業務の一部を再委託する側に回ります。
二次請け以降で変わること
二次請け以降の会社は、元請けから割り振られた範囲の実装やテスト、運用保守を担当することが中心になります。公正取引委員会の調査では、資本金3億円以下の中小のソフトウェア業者について、元請けとしての受注割合が0〜20%にとどまる会社が多いという結果が示されています。公正取引委員会『ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書』
単価への影響も指摘されています。Heyday透明性メディアが同じスキル条件の案件データを比較した記事では、1次請けと2次請けで月額15万円ほど、1次請けと3次請けでは月額25万円ほどの差が出ると分析されています。1社の独自分析であり、公的な統計ではない点には注意が必要です。
| 比べる項目 | 元請け・一次請け | 二次請け | 三次請け以降 |
|---|---|---|---|
| 主な仕事 | 要件定義・全体設計などの上流工程 | 設計の一部・実装・テスト | 実装やテスト、運用保守が中心 |
| エンド企業との関係 | 直接契約する | 元請け経由で関わる | 間に複数社を挟んで関わる |
| 単価に対する取り分 | 手数料を差し引かれにくい | 元請けの手数料分だけ目減りする | 複数社の手数料が積み重なる |
キャリアノート編集部が、商流を解説する複数の業界記事と公正取引委員会の調査結果をもとに整理(2026年9月22日確認)
知恵袋には、同じ客先に5年アサインされ続けているのに単価が据え置きだという30代エンジニアの質問がありました。Yahoo!知恵袋。商流の深い位置ほど、営業担当が単価交渉をしているかどうかが手取りに直結しやすくなります。
自分が今いる商流の位置は、契約書に書かれた取引先の名前をさかのぼると分かることがあります。次の章の規模とあわせて見ると、会社の立ち位置がより具体的につかめます。
売上規模で見るSES会社の4分類

SES会社は、商流上の位置だけでなく、売上規模でも性格が変わります。大きく分けると、大手ITベンダー系列の会社、独立系で株式を上場している会社、独立系の中堅・中小企業、数名規模の小規模事業者の4つに分けられます。ここでは個別の会社名や数値ではなく、規模ごとの一般的な傾向として整理します。個別企業の実数は次章の方法で読者自身が確認してください。
大手系列・独立系上場SES会社の規模感
大手ITベンダーの子会社や、独立系で株式を上場している会社は、社員数が数百人から数千人規模になることが多く、上場していれば有価証券報告書で売上高や従業員数を確認できます。案件の幅も広く、教育制度や還元率を公開している会社も見られます。
独立系中堅・中小SES会社の規模感
独立系の中堅・中小企業は、社員数が数十人から数百人程度で、非上場のため公開情報だけでは正確な売上規模をつかみにくいのが実情です。取引先が特定の元請けに偏っている会社もあり、その元請けの業績や案件量に経営が左右されやすくなります。
| 規模の分類 | 社員数の目安 | 情報の公開度 | 案件の傾向 |
|---|---|---|---|
| 大手ITベンダー系列 | 数百人〜数千人規模 | 有価証券報告書等で確認できる | 案件の幅が広い |
| 独立系の上場企業 | 数百人規模が中心 | 有価証券報告書等で確認できる | 特定分野に強みを持つ会社が多い |
| 独立系の中堅・中小企業 | 数十人〜数百人規模 | 会社概要や求人票が中心 | 特定の元請けへの依存度が高くなりやすい |
| 小規模・個人事業に近い会社 | 数名規模 | 公開情報が少ない | 案件の確保が経営者の人脈に左右されやすい |
複数のSES企業一覧・比較記事に共通する規模区分をもとに、キャリアノート編集部が独自に整理。個別企業の売上高・従業員数はこの記事では確認していない
規模が大きいほど良いとは限りません。大手でも運用監視に偏った配属はありますし、中小でも上流を任される場合があります。規模は目安のひとつであって、絶対の基準ではないと考えたほうが安全です。
規模の分類は、あくまで公開情報の確認しやすさの目安です。次の章で、実際にどこを見ればいいかを整理します。
商流と規模からSES会社を見分ける方法

SES会社の商流上の位置や規模は、応募する前の公開情報である程度まで確認できます。決め手になるのは、求人票に書かれている仕事内容の具体性と、法人番号公表サイトやEDINETのような公的なデータベースの有無です。1社の情報だけで判断せず、求人票と公的データベースを重ねて確認すると、実態に近づきやすくなります。
求人票・採用ページで確認するポイント
求人票では、仕事内容の書き方に注目します。「客先常駐」「運用保守」とだけ書かれ、案件名や担当工程が示されていない場合、二次請け以降で下流工程を担当する案件の可能性があります。逆に案件名や使用技術、担当工程まで具体的に書かれていれば、元請けに近い位置にいる可能性が高くなります。
- 仕事内容に案件名や担当工程が具体的に書かれているか
- エンジニアへの還元率や単価の決め方を公開しているか
- 案件を選べる仕組み(案件選択制)があるか
- 研修や資格取得支援など教育の仕組みがあるか
法人番号公表サイト・EDINETで確認するポイント
国税庁の法人番号公表サイトでは、法人の商号または名称、本店または主たる事務所の所在地、法人番号という基本3情報を誰でも無料で検索できます。国税庁法人番号公表サイトで、会社が実在し登記されているかをまず確認できます。
株式を上場している会社であれば、金融庁が運営するEDINETで有価証券報告書などの開示書類を無料で閲覧できます。金融庁『EDINETについて』。売上高や従業員数、事業内容の記載を、伝聞ではなく一次情報で確認できるのは上場企業ならではの強みです。
非上場の中小企業は有価証券報告書が無いため、会社概要や求人票の記載、法人番号公表サイトでの実在確認までが公開情報でできる範囲になります。それ以上は面談で直接聞く必要があります。
多重下請け構造がもたらす問題 公正取引委員会の調査から

多重下請け構造とは、1つの仕事に複数の会社が上下の関係で連なって関わる構造のことです。公正取引委員会は2022年6月、資本金3億円以下のソフトウェア業者約2万1000社を対象にした調査をもとに、この構造が抱える問題を報告書にまとめました。SES会社の多くも、この構造のどこかに位置しています。ここでは伝聞ではなく、公表された調査結果をもとに問題の中身を確認します。
下請法上の問題行為の内訳
同報告書では、下請法上の禁止行為に該当すると考えられる経験のうち、「買いたたき」が15.7%で最も多く、次いで「不当な給付内容の変更」が14.2%、「下請代金の減額」が13.5%だったと示されています。公正取引委員会『ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書』
| 下請法上の問題行為 | 経験したと回答した割合 |
|---|---|
| 買いたたき | 15.7% |
| 不当な給付内容の変更 | 14.2% |
| 下請代金の減額 | 13.5% |
公正取引委員会『ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書』(2022年6月公表)の公表数値をそのまま転記
これは発注側と受注側の間の下請法上の問題であり、SES会社そのものが違法というわけではありません。ただ、商流が深くなるほどこうした構造の影響を受けやすい立場になることは知っておく必要があります。
商流が深いとエンジニアの受け取り分に何が起きるか
商流を複数挟む位置では、各社が契約のたびに手数料を確保するため、現場のエンジニアに配分できる原資が構造的に減っていきます。前の章で紹介したHeyday透明性メディアの分析でも、1次請けと3次請けの間で月額25万円ほどの差が出ると報告されていました。
SNS上では、未経験者を経験者と偽って提案する、社会保険未加入が発覚して連絡が取れなくなるといったトラブルが共有されることがあります。特定の会社名を挙げた真偽不明の情報を鵜呑みにせず、次の章の公開情報での確認と組み合わせて判断してください。
SESを利用・選ぶときの判断軸

SES会社を選ぶ場面では、商流と規模だけでなく、還元率の公開や案件を選べる仕組みの有無も重要な判断軸になります。検索上位の記事でも繰り返し挙げられている論点で、契約前の面談で直接確認できる項目です。ここまでの商流・規模の話と組み合わせると、面談で何を聞くべきかがより具体的になります。1つの回答だけで決めず、複数の質問への答え方を見て判断してください。
還元率や評価制度を確認する
還元率とは、エンジニアの単価のうちどれだけが給与として還元されるかを示す割合です。この割合や評価制度をあらかじめ公開している会社は、契約条件を明確にする姿勢がある会社だと判断しやすくなります。逆に、質問してもあいまいにされる場合は注意が必要です。
案件選択制など裁量の有無を確認する
案件選択制とは、次にどの現場で働くかをエンジニア自身が選べる仕組みのことです。導入している会社では、複数の候補案件が示され、条件を比較したうえで選べます。導入の有無や運用の実態は、面談で「案件を断った実例があるか」まで聞くと確認しやすくなります。
- 還元率や単価の決め方を具体的に説明できるか
- 案件選択制の運用実績(断った実例)を答えられるか
- 同じ現場に長く据え置かれた場合の単価交渉の仕組みがあるか
- 研修や資格取得支援など、商流を上げるための支援があるか
こうした判断軸は、働くカテゴリの記事一覧で紹介している職場の見極め方とも共通しています。1つの項目だけで決めず、複数を組み合わせて確認してください。
- 個別のSES会社の売上高・従業員数・還元率は、この記事では確認していません。会社ごとの数字は、本記事で紹介した国税庁法人番号公表サイトやEDINET、各社の公開情報で読者自身が確認する必要があります
- Heyday透明性メディアが示した一次請け・二次請けの年収差は1社の独自分析であり、公的統計として裏付けられた数値ではありません
- SNS上で共有される『要注意SES会社』の情報は真偽を確認できないため、この記事では具体的な会社名や事例として扱っていません
よくある質問
SES会社は全部やめたほうがいいですか?
一律にやめたほうがいいとは言えません。商流上の位置や会社の規模によって、任される仕事の幅も単価の決まり方も大きく異なるためです。元請けに近い会社や、還元率・案件選択制を公開している会社では、上流工程や設計に関わる機会もあります。まずはこの記事で紹介した方法で、志望・在籍先の会社が商流上どこに位置しているかを確認することから始めてください。
SES会社かどうかは求人票のどこを見ればわかりますか?
契約形態の欄に「準委任契約」「客先常駐」といった記載があれば、SES会社である可能性が高いといえます。あわせて、案件名や担当工程が具体的に書かれているか、還元率や案件選択制について記載があるかを見ると、商流上の位置や会社の姿勢をある程度推測できます。求人票だけで判断しきれない部分は、面談で直接質問してください。
二次請け以降のSES会社で働くとどんなデメリットがありますか?
元請けに比べて単価に対する取り分が少なくなりやすく、担当する工程も実装やテストなど下流に寄りやすい傾向があります。Heyday透明性メディアの分析では、同じスキル条件でも一次請けと三次請けの間で月額25万円ほどの差が出ると報告されています。ただし、これは1社の独自分析であり、すべての案件に当てはまるとは限りません。
まとめ
SES会社の実態は、商流上の位置と売上規模という2つの軸で見えてきます。元請けに近いほど上流工程や単価の面で有利になりやすく、規模が大きく上場している会社ほど有価証券報告書のような公開情報で確認できる範囲が広がります。会社選びは、この2つの軸を公開情報で確認するところから始められます。特定の会社を評価する前に、まず自分で調べられる範囲を広げておくことが役に立ちます。
- SESの契約形態は準委任契約で、指揮命令はSES会社側が行うのが原則
- 商流は元請け・一次請けから二次請け、三次請け以降へと連なり、深くなるほど単価に対する取り分が減りやすい
- 売上規模は大手系列・独立系上場・独立系中堅中小・小規模の4つに大きく分けられる
- 国税庁法人番号公表サイトやEDINETを使えば、会社の実在や上場企業の開示情報を無料で確認できる
- 還元率の公開や案件選択制の有無は、面談で直接確認できる実践的な判断軸になる
特定の会社を評価する前に、まずは本記事で紹介した公開情報の確認方法を1つ試してみてください。このサイトの記事の作り方は編集方針と情報源に、企業の序列を扱った記事はNECグループの序列を整理した記事にまとめています。
参考資料
